宇江佐真理 玄冶店の女
日本橋の玄冶店(げんやだな)と呼ばれる路地で小間物屋を営むお玉は、元花魁。身請けされた旦那と縁が切れた矢先、芸妓屋の顔見知りの娘が通う手習い所の師範、青木陽蔵に出会う。その清廉な人柄に、お玉は強く惹かれるが、それは世間が許さぬ分を越えた恋だった。運命に翻弄されながらも健気に生きる女たちの切なくて心温まる八つの物語。傑作人情譚。(文庫版 裏表紙より)
今年に入ってから出会った宇江佐真理さん。ほっこりする歴史ものがすきな私にはドストライク。
描かれてる時代には、私が理解ができないような体裁だったり分別、階級とかがあって、そんなの好きだったら越えられるなんていままで思ってたけどそう簡単に世の中進まないなと宇江佐さんの小説をよみながら勉強するわけです。
現代では階級とかはそうそうないけれど、どうしようもできない壁がいっぱいある。1番わたしが感じている壁は遠距離恋愛と称されるものかな。そばにいたいそんなどうってこともないような願いがすべての状況を大げさにしてどうしようもなくなる。もちろん、プラスの方向にもっていける人たちもいるけど。
P175 残菊
葉も茎もすっかり茶色に枯れているのに、錆朱の花びらだけは頑固に形を保っていた。そんな花は嫌いだとお玉は思う。いっそ、真っ先に花びらを散らしたらいいものを。辛抱、堪忍。女の持つ美徳、いや悪徳をお玉は菊の花に感じた。
もしも本当に枯れてしまえるならどんなに楽だろう。でも、ここで枯れたらだれにも相手にされない。あともう少しと思って頑張り続けるしかない。この世に生きるとはそういうことなのかもしれない。
そして一番悲しい目をみるのは、男に惚れこんだ女だということだな。
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